October 17, 2005

ベルカ、吠えないのか?

10.17.jpgタイトルに妙に惹かれてしまい、
そのうち読んでみたいと思っていた1冊。
期待以上に面白かったかどうかと問われれば
答えに間を置くことになるけれど、
好き・嫌いのどちらかに分けるとすれば、「好き」。
これは、ぼくの中でも位置づけの難しい異作。

1943年、日本軍が撤収したキスカ島。
無人の島には4頭の軍用犬が残された。
捨てられた事実を理解するイヌたち。
やがて彼らが島を離れる日がきて-。
それは大いなる「イヌによる現代史」の始まりだった!

全体に散文的で読みづらいうえに、章ごとに年代も場所も変移する。
イヌたちは、時代や思想やくだらない思惑に翻弄されながらも、繁殖の系統樹を枯らさない。
読み進めながらその樹形図を追っていくことが、なかなかにしんどいのは確か。

世界中に殖え続けるイヌたちは、互いに顔も知らない血縁として、
翻った土地で思いがけず互いの運命を交錯させる。
こうした時間と空間を越えた邂逅こそが、ヒトを主人公にしては醸せないロマンティシズムであり、
この作品が勝ち得た醍醐味(これがあるが故に「好き」な1冊と言える)。
そして、人類に先駆けて地球を見下ろす“同胞”を輩出する。

蕾を着けた植物が、ゆっくりと花を開かせ、やがて萎れたそれを地上に落とす…。
クライマックスは、そんなハイスピードカメラの映像を早回しで見るような感じを受けた。
ただしその花は、誰のせいでもなく、咲く時期を間違ってしまった。

無時間から動き出した物語は、またも無時間へと回帰していく。
イヌはヒトに選ばれ、ヒトはイヌに選ばれ、“ヒトとイヌ”は“イヌとイヌ”に。
国家やイデオロギーからは開放されても、選び抜かれた血筋は野生には堕さない。
報復の時は、いつか?

October 17, 2005 12:30 PM

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