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June 05, 2006
ジゴク行き
ぼくが子どもの頃はよく
「悪さばしたら、死んだ後で地獄に落ちるとよ」
なんて聞かされたもの。
「ふーん。ジゴクって何?」
「鬼がおって、血の池とか針の山とかあって、
ずーっと苦しめられる恐ろしかところたい」
そうした話は案外と軽いトラウマになっているらしく、
昔やらかしたあんなことやそんなことをふと思い出すたびに、
「あの時のアレって、ジゴク行きレベルかもなぁ…」なんて考えてたりする。
そんな≪あの時のアレ≫をひとつ。
小学一年生の一学期。
クラスの中でも友達づくりがヘタだったぼくは、みんなと一緒にワイワイ遊ぶよりも、
自由帳に絵を描いたり、粘土をこねて何かを作ったりしている方が好きだった。
給食を食べ終わると、クラスメイト(←この言葉、割と嫌い)のほとんどは校庭に一目散。
静かな教室には、そんなぼくのほかに何人かがぽつりぽつりと残っていた。
ぼくの席の前には、昼休みになるとなぜかいつもひとりの女の子がいた。
今となっては名前はおろか顔も思い出せないその子は、
ぼくが絵を描いたり粘土をこねたりするのを楽しそうに眺めては、
時折「なんば描きよると?」「上手かねぇ」なんて話しかけてきた。
でも正直、どうしていつもそばにくるのか、さっぱり分からなかった。
小学校低学年の男の子といえば
「オイは大人になってもずーっとケッコンせんもん!」なんて真顔で言い張るくらい、
女の子と一緒にいること自体が照れくさい生き物。
学研のニューワイド学習図鑑にもそう書いてある(←ウソ)。
その点では、ぼくもほかの男子と同じだった。
だからその子は、ぼくにとってちょっとやっかいな存在だった。
なにしろ、昼休みにはつねにツーショット。
もう、からかってくれ!と言っているようなものである。
そして案の定、「またイチャイチャしよる~!」「仲よかな~!」なんて冷やかされるようになった。
そうなると、ぼくがその子に向かって言えるセリフはひとつしかない。
「あっち行け!」
それでもその子は「そがんこと言わんでよかたい」なんて言って、ちょっと困ったような笑みを浮かべて、
付かず離れずな距離でぼくの席の近くにいた。
ぼくはもう、話しかけられても知らんぷりを通した。
そうしてしばらくが過ぎたある日の朝のこと。
教室にその子の姿が見当たらない。
担任の先生が、朝礼時間の前に入ってきて言った。
「○○さん(その子)は、お父さんの仕事の都合で急に転校になりました」
(↑この理由が本当だったのかどうかも、すでに知る術はない。)
ぽかーん…。
「先生、テンコウって何?」誰かが言う。
「ほかの学校に通うようになることです。もうこの学校にはきません」先生はそう答えて出て行った。
「よかったな。もうベタベタ寄ってこられんで済むぞ」ひとりの男子が、ニヤリと笑ってぼくに言った。
無言で席に着いてランドセルの中身を机の中に移していると、そこに何かあるのが分かった。
取り出してみると、それは赤い封筒に入った手紙だった。
封筒には、もう会うこともなくなってしまったその子の名前があったように記憶している。
「おっ! そい何や!?」さっきのやつが、それを目ざとく見つけた。
「何でもなか!」
ぼくはとっさに、その手紙を持って教室の隅にあるゴミ箱の前まで行った。
そして、クシャクシャに丸めて放り込んだ。
転校してしまう女の子がひっそりとくれた手紙を、ぼくは読まずに捨てた。
それも、初めて女の子からもらった手紙を…。
それだけで、ぼくには十分にジゴク行きの資格があると思っている。
June 5, 2006 10:24 PM
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Comments
なんだか切ないですねー。
しかも歳を重ねるごとに重くなる切なさですね。
ゴミ箱にすてた罪の代償は、一生抱き続ける切なさかも。。
ぼくはバレンタインデーのチョコをくれると言ってくれた娘に
「そがんとイランっ」と言ったのを今でも後悔してます。w
posted by ura : June 6, 2006 12:17 AM
uraさん、ごぶさたしてます。
仕事、がんばってるみたいですねー!
この間のポストイット・ノートの記事も、面白かったですよ。
ホント、こればっかりは誰に許しを請うこともできませんからね。
思い出すたび罪悪感は募るばかりです。
ここはいっそ、ナイトスクープにでも投稿して捜してもらいましょうか?(笑)
まぁ、この件を許してもらえたとしても、まだまだジゴク行きの切符は(以下自主規制)
posted by 580 : June 6, 2006 08:34 AM