September 06, 2007

スカイ・クロラ

9.6.jpg英字表記にすると"The Sky Crawlers"。
前大戦から50年以上を経てもなお、
レシプロ機が向こうを張って空に舞う時代。
いつ終わるとも知れない戦争を
国家に代わって企業同士が繰り広げる世界で、
主人公のモノローグによって綴られる物語。

戦闘機乗りのカンナミ・ユーヒチにとっては、地上は空の底ということになるらしい。
這いつくばるように飛ぶ、とはよく言ったもの。

天使になれなかった僕たちは、最後は地上へと戻らなくてはならないのだ

ぼくはこの一文で、グイッと心を掴まれてしまった。

この小説におけるパイロットという人種の描かれ方は、
決して気高いものでも、美しいものでもなく、
ただほかに生きる術を持たない、いわば単なる戦闘機の中身。

誰かに殺されるまで、暇つぶしに乗る

“キルドレ”であるカンナミたちは、
老いることも病に斃れることもなく、飛行機とひとつになることで
「生きている、という不自由さ」から解放されようとする。
戦闘機+それを偏愛する無機質な主人公、という構図に
神林長平の『戦闘妖精 雪風』を思い出すけれども、
こちらのSF的要素はごく最低限。いや、むしろかなりの文学路線。
もしも10代の頃に読んでいたら、きっとのめり込んでいたはず。

さて、その“キルドレ”がガンダムでいうところの
“ニュータイプ”ばりに意味不明なのはさておき、
とにもかくにも続編の『ナ・バ・テア』が、いろいろな意味でウマ過ぎて困る。
あれじゃあ、シリーズを最初から読み直さないといけない。
じゃないと、おちおち第三巻『ダウン・ツ・ヘヴン』に手が伸ばせない。
とっくに買い揃えてあるというのに。

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 October 29, 2006

TITLe 12月号は“買い”!

ページをめくっているだけで幸せな気分になれそうな
今月のTITLe。何と言っても、巻頭特集が
「いま一番食べたい最旬スイーツ全339個!」。
とにかくお菓子、お菓子、お菓子のお菓子尽くし。
写真の数々の美しさもさることながら、
テキストも「おいしそう」に書いてあるんだなぁ。

トルシュ オー マロン
はかないメレンゲのサクサク感を十二分に味わってもらいたいと、オーダーを受けてから仕上げるモンブラン。ヨーロッパ産の栗を使う自家製のマロンペーストも美味。 ¥500。

こんな感じの、読み応えも味わいもタップリな約80ページ。
ここはひとつ、思う存分目で楽しませてもらうとするかな。
幸か不幸か、これならカロリーも胸焼けも心配しなくてすむし(泣)。

スイーツ・ファンにとっては Buy or Die な、
まさしく永久保存版レベルの1冊じゃなかろうかと思われ。
あ、会社で仕事に煮詰まった時にパラパラ眺めたら、いい気分転換になりそうだな。

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 August 09, 2006

わたしを離さないで / カズオ・イシグロ

8.9.jpg何のために生きているのか?
この誰もが抱く疑問に対し、
明確な答えが与えられたことはない。
しかし、きっとそれでよいのだ。
その答えが明らかにされた瞬間から、
人の生は意味も輝きも失ってしまうだろうから。

登場人物が大勢いるにも関わらず、その相貌について語られる場面はほとんどない。
主人公・キャシーの顔ですら、最後まで靄にかかったかのよう。
しかし逆にそれによって、彼らの存在そのものの特異性は際立ってくる。

夢を叶えるためにでもなく、ましてや子を育むためにでもなく、
ただ見知らぬ他人の未来のためにだけ、生き永らえることを許された集団。

本当に愛されたことがないから、本当に愛しているのかが分からない。
セックスに対する彼らの執着は、愛が何に結実するかを想い描けないがゆえの反動なのだろうか。

互いを結び付けている感情が愛であると信じたいからこそ、
それを誰かに証明して欲しいという思いに駆られるもの。
認めれた結果として得られる対価が、一時しのぎの猶予期間に過ぎないとしても。

この作品を景色にたとえるとすれば、それは低く垂れ込める雲に覆われた鈍色の空。
色彩感覚をあえて排したかのような描写に、読み手の心象風景からも色味が失せていってしまう。
そして、体温までもが冷めていくような感覚に襲われる。

キャシーの顔がようやく涙で覆われた時、ぼくの心にはなぜか安堵が訪れた。
それでも空にはいっそう暗雲が広がり、言い知れぬ肌寒さを残して物語は終幕を迎えた。

人間すべてに共通する状況下にクローン人間を描くことで、自分と異なる人たちの話だと思って読むうち、これは自分自身に当てはまる話なんだと気づいてほしかった
人の一生は私たちが思っているよりずっと短く、限られた短い時間の中で愛や友情について学ばなければならない。いつ終わるかも知れない時間の中でいかに経験するか。このテーマは、私の小説の根幹に一貫して流れています

[ via: 本よみうり堂 出版トピック 『わたしを離さないで』刊行 カズオ・イシグロ氏

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 June 20, 2006

ユリイカ6月号 特集 任天堂/NINTENDO

6.20.jpgスーファミよりもメガドラに惹かれ、
プレステの旗色を伺いつつサターンに縋り、
そしてドリキャスに託した一縷の望み……。
誰が言ったか、このひと言。「セガファンの道こそ茨の道」。
絶えず日陰に身を寄せつつ、
最後に飛び込んだのは任天堂の胸の中。
霧に煙る夜更けの波止場に、希望の汽笛が響きます。
Wiiiiiiiiii……。

昭和の歌謡曲を愛して止まないみなさま、今宵も"uni."へようこそ。

さて、何を隠そう16bitマシン以降はセガ派だったぼくなワケだけど、
ユリイカ6月号 特集 任天堂/NINTENDO
には楽しく目を通すことができた。

ぼくが好きだったのは、やっぱりプラットフォームホルダーとしてのセガ。
たとえて言うなら、それは子悪魔に振り回されて終わった横恋慕ってトコロかな?
そんな過去も、今ならちょっとした笑い話として片付けられるもんね。
だから、素直に言っちゃうよ。
「任天堂さん! やっぱりあなたのことが好きです!!」

なんて戯言はさておき、これは任天堂ファンならずとも、ゲームファンなら読んでおいて損はないんじゃないかな。

『スーパーマリオ』にしても『ドラクエ』でさえも、身体を使っていた記憶がある。それが、スペックが上がっていくにつれて希薄になっていく。「僕はここにじっとしていて、画面のキャラクターがムービーになってどんどん動いていく」みたいに、どんどん自分の身体が忘れ去られていく。

~鴻上尚史×八谷和彦「僕らが任天堂に教わったこと」より~

DSとWiiに至り、任天堂のゲームに対する姿勢はいよいよ明らかであろう。これらのハードの設計にあらわれているのは、「ゲームとはこういうものだ」という「常識」に疑いをさしはさみ、作り手と遊び手にゲームについての再考を促すための問いかけである。

~山本貴光「ゲームへの寄与 任天堂のスピリット・オブ・ワンダー」より~

ゲーム制作の手法、遊び方と遊ばれ方、ひいてはハード自体のあるべき姿が見直されようとしている現在、
現場が、市場が、そしてゲームファンが、かつて一時代を築いた巨人に再度地ならししてくれることを望んでいる。
少なくともぼくは、自分自身がそんな期待感を持っていることを、この1冊ではっきりと認識できた。

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 June 02, 2006

ジロン・アモスは男の子!

6.2.jpg今月のモデルグラフィックスは、驚きの≪ザブングル特集≫!
イイ歳こいた大人(ライター&モデラー)が楽しそうなこと(笑)。
まぁ、だからこそ、ページをめくるこっちも楽しいワケで。
1/35ギャロップタイプ(!)をはじめとした作例のほか、
ボックスアート集や横山宏氏による高荷義之氏評、
当時のバンダイスタッフへのインタビューなど、
「これぞモデグラ!」な内容(だけど売上部数が心配…)。
かつて胸躍らせた“男の子”は、ぜひとも一部ご購入あれ。

小遣いをやり繰りして、ワクワクしながら新作キットを買ってたっけなー。
あー、もう一回、TVシリーズが観たくなってきたなー。
きっと、今観ても面白いよなー。

こんなの見せられたら、また「1/100のウォーカーギャリアが欲しいよー」
なーんて思っちゃうじゃん。
どうしてくれるんだよ、モデグラさんよ!
あ、ごめんなさい。末永く刊行し続けてくれさえすれば、それで十分です。
いや、ホントに。

…にしても、あさのまさひこ氏の文章って、よくも悪くも変わってないよね。
てゆーかさ、ぶっちゃけ、どこを取っても『センチネル』の頃のまんまだよね。
あ、ごめんなさい。何でもないです。いや、ホントに。

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 May 17, 2006

出雲重機 INDUSTRIAL DIVINITIES(記憶倉庫整理)

5.17.jpg今は亡きdesign plex誌の出雲重機特集号は、
かなりチャレンジングな企画だった。
グラフィックデザインの専門誌で
世間に顔も出さないようなメカデザイナーが
表紙と巻頭を飾ったことなんて、後にも先にもない。
そんな出雲重機こと大久保淳二の作品集。

重機がモチーフとはいっても、IZMOプロダクトの多くは一見して
「どんな用途があるのかよく分からないけど、コレってソソるフォルムだよな」といった趣のデザイン。
たとえば、シオマネキのオスがあの大きなハサミという不釣合いな器官で存在感を醸し出しているように、
理論的整合性から半歩はみ出したようなアンバランス性と、それに伴って生じたミステリー性とによって、
本来は表情など持たない機械がキャラクター的魅力を獲得している。

今回収録された図版の中でも、「個人的に、こういうの見たかったんだよね~」的な意味では、
鳥居がモチーフの"threshold"がその異様に長い〈脚〉をそれこそ鳥のように曲げて佇んでいる姿を描いたものがベスト。

各“製品”のディテールに目を凝らすのもイイけれど、
「もしもIZMOの展示会なんてものがあったとしたら、会場は動物園みたいな雰囲気になるんだろうなぁ」
なんてコトを想いながらページをめくるのも楽しい。

『鉄騎』に登場するバーティカル・タンクよりも『フォー・ザ・バレル』(今や完全に“なかったこと扱い”か…)の
マシニング・スキンの方が路線的には好みなので、それが収められていないのが非常に残念。
オトナの事情、ってのも分かるけどね…。

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 May 02, 2006

ウェブ進化論

5.2.jpg新書を手に取ったのって、何年ぶりだろう?
そんなコトはさておき、評判通り面白い一冊だった。

「テクノロジーの進歩」という表層に覆われた
シリコンバレーを代表するIT企業群(と経営陣)の
来し方の比較と現状分析は、とても興味深かった。

〈人〉の〈情報〉への関わり方が再構築されていく現在の潮流の先に、
たとえばGoogleは何を築き上げようとしているのか。
ウェブの世界に進化をもたらす“神の手の意思”に忠実な徒の
神話を現実世界へと手繰り寄せるその力と信念に、
期待と興奮をかき立てられる一方で、一抹の末恐ろしさがよぎったのも事実。

能天気にコンピューティング・ユートピアの到来を語る内容ではないだけに、
読者に対していたるところで〈考える〉ことを迫る本。
そしてその分刺激的で、何度も読み返したくなる魅力がある。

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 October 17, 2005

ベルカ、吠えないのか?

10.17.jpgタイトルに妙に惹かれてしまい、
そのうち読んでみたいと思っていた1冊。
期待以上に面白かったかどうかと問われれば
答えに間を置くことになるけれど、
好き・嫌いのどちらかに分けるとすれば、「好き」。
これは、ぼくの中でも位置づけの難しい異作。

1943年、日本軍が撤収したキスカ島。
無人の島には4頭の軍用犬が残された。
捨てられた事実を理解するイヌたち。
やがて彼らが島を離れる日がきて-。
それは大いなる「イヌによる現代史」の始まりだった!

全体に散文的で読みづらいうえに、章ごとに年代も場所も変移する。
イヌたちは、時代や思想やくだらない思惑に翻弄されながらも、繁殖の系統樹を枯らさない。
読み進めながらその樹形図を追っていくことが、なかなかにしんどいのは確か。

世界中に殖え続けるイヌたちは、互いに顔も知らない血縁として、
翻った土地で思いがけず互いの運命を交錯させる。
こうした時間と空間を越えた邂逅こそが、ヒトを主人公にしては醸せないロマンティシズムであり、
この作品が勝ち得た醍醐味(これがあるが故に「好き」な1冊と言える)。
そして、人類に先駆けて地球を見下ろす“同胞”を輩出する。

蕾を着けた植物が、ゆっくりと花を開かせ、やがて萎れたそれを地上に落とす…。
クライマックスは、そんなハイスピードカメラの映像を早回しで見るような感じを受けた。
ただしその花は、誰のせいでもなく、咲く時期を間違ってしまった。

無時間から動き出した物語は、またも無時間へと回帰していく。
イヌはヒトに選ばれ、ヒトはイヌに選ばれ、“ヒトとイヌ”は“イヌとイヌ”に。
国家やイデオロギーからは開放されても、選び抜かれた血筋は野生には堕さない。
報復の時は、いつか?

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 May 08, 2005

となり町戦争

5.8.jpg自治体同士が事業の一環として始めた戦争。
ここでいう“戦争”とは、何かの喩えなどでなく、
人命という犠牲を伴う集団的な戦闘行為そのもの。
ごく平凡なサラリーマンである主人公は、
身近に起こっているはずのその事態に対し、
リアリティが感じられずに戸惑う。

誰かの血を目にすることもなく、銃声や怒号を耳にすることもないまま、
開戦前と同じように会社に出勤する彼。

非常事態が日常の中に埋没させれられてしまうのは、現実世界とて同じ。
海外から伝えられるテロや紛争のニュースを見聞きするたびに、
不快感や嫌悪感、あるいは漠然とした恐怖感は生じてくるものの、
危機感のような身に迫る感覚はどうしても生まれてこない。
911テロ事件もイラク戦争も、決して「遠い国のお話」以上のものではなかった。
人生の一部分を占める何かを力ずくで剥ぎ取られたりしない限り、
事態の及ぼす影響を自分の尺度で推し量ることなど誰もできない。

やがて彼は偵察要員となって、あくまでも間接的にその戦争に加担していく。
町役場の女性とふたり、新婚夫婦を装い敵対する町での暮らしを始めるが、
事業の形を取った戦争では、どこまでも計画的にすべてが運ばれ、
ある日突然に街角で火の手が上がるようなことがない。

メディアによって自らに植えつけられた、イメージとしての戦争。
主人公は、終戦までそのイメージを超えるリアルに触れることができなかった。
ただし戦争は、たとえ非戦闘要員ではあっても、当事者を無傷で日常に帰すことはしなかった。
彼、そして読者にとっては、最後に感じた喪失感の大きさだけが、その戦争が垣間見せた真実なのだろう。

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 April 14, 2005

半島を出よ -3-

4.14.jpgそれは「奇蹟」でも「聖戦」でもなかった。

直接的かつ大規模な武力衝突が
描かれることを想像していたけれど、
少年たちの戦いは
息を殺しながらのものだった。

彼らの計画が実行に移されるくだりはかなりご都合主義的な展開で、
読んでいて少なからず鼻白んでしまう自分がいた。
しかし、どこまでも克明に描写される静かなる戦いが、
確かな興奮をもたらしてくれたことは間違いない。
その興奮は、立ち上る炎のような勢いを伴わない代わりに、
スチールウールに飛んだ火の粉がチリチリと燃え広がっていくような、
そんな性質を持っていた。

そして迎えた破壊的なクライマックスは、
残酷であると同時にこの上ない美しさを湛えていた。

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 April 07, 2005

半島を出よ -2-

4.7.jpgなぜ彼はグループの中でただひとり、
高麗遠征軍のことを「敵だ」と断言したのだろう?
12万人もの北朝鮮特殊戦部隊は、
本当に上陸してくるのだろうか?
2011年。閉塞感と諦めに満ちた日本に、
一体どんな奇蹟が起こるというのだろう?

いよいよ少年たちの抵抗が始まった。
なだれ込むように、圧倒的な勢いで上巻から下巻へ。
圧倒的といえばページ的なボリュームもまた然りで、
ようやくといった感じで下巻までたどり着いた。
さて、どのような結末が待ち受けているのか?

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 April 01, 2005

半島を出よ

4.1.jpgまだまだ読み始めたばかりの『半島を出よ(上)』。

冒頭から村上龍ファンには
なじみのあるキャラクターが登場し、
それによって、いきなり不穏な空気が充満している。
この世界では、あの事件も現実にあったことなのか。

ハードカバーの小説なんて、久しく買ってなかった。
それだけ、この作品には期待している。
じっくりと読み耽ることにしよう。

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 March 21, 2005

TWO FACTORY

two_factory.jpg小林誠
『ハイパーウェポン
再生なき永遠の闇へ』
モデルアート

横山宏
『マシーネンクリーガーVol.2』
アートボックス



ぼくが小学生の頃から憧れているクリエーターふたりが、
立て続けに作品集を刊行。

絵も描けば造形もこなす両氏。
作品にはどれも、
手を動かす中でしか生まれないフォルムだけが持つカッコよさが、
しっかりと息づいている。
コンピュータ等との技術とも融合を図りながら、
根本的な製作姿勢は、年月を経ても変わっていない。

ページをめくっていると昔の気持ちがよみがえってきて、
また何か始めてみようかな、なんて気にさせてくれる。

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